著作権法の一部を改正する法律の概要

「著作権法の一部を改正する法律」が、平成30年5月18日に成立し、同年5月25日に平成30年法律第30号として公布され、本法律は、一部の規定を除いて平成31年1月1日に施行されることとなりました。

改正の趣旨

デジタル・ネットワーク技術の進展により、新たに生まれる様々な著作物の利用ニーズに的確に対応するため、著作権者の許諾を受ける必要がある行為の範囲を見直し、情報関連産業、教育、障害者、美術館等におけるアーカイブの利活用に係る著作物の利用をより円滑に行えるようにする。

 

著作権制度について

<著作権の保護>
・他人の著作物(例:小説、論文、新聞、写真、美術、音楽、映画、コンピュータプログラム等)を利用する場合、著作権者の許諾が必要。
(※)権利が付与されている行為:コピー(複製)、ネットワークでの送信(公衆送信)、演奏、上映、譲渡、貸与等
<著作権の例外(「権利制限規定」)>
・法律で定める一定の場合は、著作者の権利が制限され、許諾を得なくても自由に利用することが可能。
(※)引用、報道のための利用、学校の授業での著作物のコピー、教科書への著作物の掲載、図書館での文献のコピー、インターネット情報検索のためのウェブサイトの情報のコピー等、様々な場合について規定が整備されている。

 

 

改正の概要

①デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備

(第30条の4、第47条の4、第47条の5等関係)
・著作物の市場に悪影響を及ぼさないビッグデータを活用したサービス等のための著作物の利用について、許諾なく行えるようにする。
・イノベーションの創出を促進するため、情報通信技術の進展に伴い将来新たな著作物の利用方法が生まれた場合にも柔軟に対応できるよう、ある程度抽象的に定めた規定を整備する。
(※) 例えば現在許諾が必要な可能性がある以下のような行為が、無許諾で利用可能となる。
○所在検索サービス(例:書籍情報の検索)
→著作物の所在(書籍に関する各種情報)を検索し、その結果と共に著作物の一部分を表示する。
○情報解析サービス(例:論文の盗用の検証)
→大量の論文データを収集し、学生の論文と照合して盗用がないかチェックし、盗用箇所の原典の一部分を表示する。

②教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備(第35条等関係)
・ICTの活用により教育の質の向上等を図るため、学校等の授業や予習・復習用に、教師が他人の著作物を用いて作成した教材をネットワークを通じて生徒の端末に送信する行為等について、許諾なく行えるようにする。
【現在】利用の都度、個々の権利者の許諾とライセンス料の支払が必要
【改正後】ワンストップの補償金支払のみ(権利者の許諾不要)

③障害者の情報アクセス機会の充実に係る権利制限規定の整備(第37条関係)

・マラケシュ条約の締結に向けて、現在視覚障害者等が対象となっている規定を見直し、肢体不自由等により書籍を持てない者のために録音図書の作成等を許諾なく行えるようにする。
(※)視覚障害者や判読に障害のある者の著作物の利用機会を促進するための条約
【現在】視覚障害者や発達障害等で著作物を視覚的に認識できない者が対象
【改正後】肢体不自由等を含め、障害によって書籍を読むことが困難な者が広く対象

④アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等(第31条、第47条、第67条等関係)

・美術館等の展示作品の解説・紹介用資料をデジタル方式で作成し、タブレット端末等で閲覧可能にすること等を許諾なく行えるようにする。
【現在】小冊子(紙媒体)への掲載は許諾不要。タブレット等(デジタル媒体)での利用は許諾が必要。
【改正後】小冊子、タブレット等のいずれも場合も許諾不要。
・国及び地方公共団体等が裁定制度を利用する際、補償金の供託を不要とする。
(※)著作権者不明等の場合において、文化庁長官の裁定を受け、補償金を供託することで、著作物を利用することができる制度
【現在】裁定制度により著作物等を利用する場合、事前に補償金の供託が必要
【改正後】国及び地方公共団体等については、補償金の供託は不要(権利者が現れた後に補償金を支払う)
・国会図書館による外国の図書館への絶版等資料の送付を許諾無く行えるようにする。

施行期日

平成31年1月1日
②については公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日。

詳しくは文化庁HPをご覧ください

著作権法の一部を改正する法律(平成30年法律第30号)について
【参照】文化庁:著作権法の一部を改正する法律

 

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